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RECOMMEND | TSDスタッフが今、気になるテキスタイルをご紹介

洗いざらしのシワ、色落ち。自然な着古し感が時代の空気。

TSDテキスタイルアドバイザーの横井達也と、テキスタイルデザイナーを目指す新人の東萌が、「ヴィンテージ感」をテーマに5つをレコメンド。プランナー歴16年の横井の確かな直感と、若い東の新鮮なセンスに注目!

”育てる生地”と”完成された生地”。デザイナーが求める生地加工にアイデアを加えて提案するのが面白い。

次の生地は製品になっていますね。こうやって見ると、生地のシワが上手く使われていることがよく分かります。
クラッシュロンスト 横井:クラッシュロンスト』という綿の先染め生地です。綿のシワ加工には二通りあり、一つは、洗ったらシワが取れるもので、シャツなどによく使われます。その場合は、洗濯のたびにねじるように絞って、そのまま干すような注意がいります。二つ目は、この生地のように洗ってもシワが取れない塩縮加工です。塩縮とは、生地をクシャクシャにしたまま塩素で固める方法で、綿や麻に使われます。
東:ちょっとゴワッとした感じですね。
横井:そうだね。塩縮は、繊維をギュッと密に凝縮する方法だから、やや重くなったり、硬くなることがあるんだ。
東:だからこそ、ジャケットにしてもキマる。
横井:それだけ主張がある生地だね。ほら『クラッシュロンスト』を使ったこのジャケットも、シワがなかったら面白みに欠けるでしょう? 特にこれは爽やかなストライプ柄だし。
東:確かにストライプってさわやかすぎて着こなしが難しいけど、このシワは絶妙ですね。ちょうどよい具合にラフさが加わって。
横井:軽く羽織る、リラックスして着る、という風潮にも合うね。洋服のデザインはキチンとしたものが多いだろうから、デキる人が遊び心で着こなす感じかな。
デザイナーはテキスタイルからインスピレーションを受けることもある、と言いますが、やはり生地の特徴が生かされた洋服に仕上がるとうれしいものですか。
横井:もちろんです。テキスタイルを生かした、より特徴ある製品に仕上がってくると喜びを感じますね。このジャケットも、モロッコのパイピングやコードをあしらって、すごく可愛くできていますね。
東:この間、横井さんに、「可愛いプリント生地を作りましょうよ」って言ったんです。そうしたら、「生地は服になってこそ。洋服のデザインを邪魔する生地は嫌いなんだよ」とおっしゃって。カッコいい! と思いました(笑)。でも、確かにその通りだなって。
横井:テキスタイルは洋服の“原料"だからね。しかも日常使いで、作家の芸術品じゃない。主張しすぎると行き場をなくすこともある。時には引くことも大事だよ。
東:控えめでありつつ、特徴があって、洋服にして毎日着たいテキスタイルを作りたいです!
横井:壁に飾って見るためのテキスタイルも作ってみたいけどね(笑)。
なるほど。テキスタイルデザイナーには、バランス感覚も必要なんですね。それでは、最後に、東さんのレコメンドをお願いします。
綿麻ウレタンコーティング 東:はい。わたしは色落ち感のテーマで『綿麻ウレタンコーティング』を選んでみました。顔料とウレタン樹脂を混ぜた染料を、綿麻の生地に載せたものです。ウレタンは簡単に言うとゴムのことで、マットな見た目と手触りが特徴です。ゴムだから撥水性もある。加工の施された表側が肌に触るのは抵抗があるけど、裏面はあくまで自然素材ですから、肌触りもいいし。
横井:製品洗いを加えれば、コーティングの張りが抑えられ、ナチュラル感も出ますよ。
東:張りがあるのに、やわらかいのって、とても不思議な手触りなんです。
横井:ただ、こういったウレタンや、濡れた感じになるオイル系のコーティングには、汚れやすいという欠点もあります。濡れた感じの生地はホコリを吸いやすいんですよ。その辺りも気遣って、デザイナーさんには紹介したいですね。
東:でも、私は濡れ感のある加工に興味があるんですよ。ボディコンシャスや、セクシャルなカッコよさが女性服に流行っているので、いつか挑戦してみたい。
横井:色落ちと言ってもいろいろあることが分かるでしょう? 例えば、洗うたびに色落ちするデニムは、言わば“育てる生地"。そして、生地作りの段階で硫化染料で染めたり、オイルコーティングしたりしたものは、出来上がった時点で欲しい感じになっている“完成された生地"だね。
東:でもこれまでは、穴が開いたりウォッシュされたデニムが流行っていましたが、逆に染めたままのインディゴブルーを活かしたノンウォッシュも出てきていると感じるんですけど。
横井:流行には反面教師的な要素があるからね。最近の傾向は織物でも編み物でもシワ加工が流行って、キレイなつるっとした生地が売れないくらい。TSDのショールームも、何かしら加工を施したテキスタイルがほとんどだけど、消費者心理としては、流行れば流行るほど飽きがきます。だから、今のうちから、シワのまったくないものや、色落ちしていないものへのシフトも発想しておく必要がある。常に状況を客観的に見ることですね。
洋服のデザイナーからいろいろな加工を求められるでしょうし。なかには、加工技術を知らないゆえに無茶を注文する方も?
横井 達也×東 萌 横井:いらっしゃいますよ(笑)。でも、無茶な相談と受け流さず、取り組んでみることで新しい発想のテキスタイルが生まれることもあります。様々な加工方法とその特徴や利点・欠点を合わせて提案することも、テキスタイルデザイナーの重要な仕事。加工技術は日々進化しているから、技術者から新しい情報を仕入れてデザイナーさんに伝えるという、橋渡しの役目もあるんです。
東:今、注目されている加工技術はなんですか?
横井:繊維にメタルを織り込んで、今回紹介した生地よりもっと強くシワ感を出すテキスタイルが流行ってきたかな。シワを記憶するポリエステルの糸も続々発表されているんですよ。加工技術者は化学の世界。そして、化学は魔法です。年に数回は工場の現場に行って、技術者といろいろ話し合うことが必要だね。
東:ぜひ連れて行ってください!
Profile
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横井 達也
横井 達也
テキスタイルプランナー/
テキスタイルのデザイン、企画、洋服デザイナーへのアドバイスまで行う万能プランナー。テキスタイルメーカーやアパレルデザイナーを経験後、フリーランスとして独立。自身のテキスタイルブランドで個展を開催したり、現在では定番とされるテキスタイルを世に送り出したことも。TSDでは新たなテキスタイルの発信と企画に尽力。多くのデザイナーが信頼を寄せる実力の持ち主。
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東 萌
東 萌
テキスタイルデザイナー(修行中)/
テキスタイルデザイナーを目指し、2005年8月のTSDオープンに合わせてスタッフになる。最近はパソコンでテキスタイルデザインをしてみるなど、頭の中のイメージを具体化する練習を実践。「難しくてまだまだこれからです。横井さんの対談は、緊張するけどとてもいい勉強なんです」。
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今回のセレクト
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T/Wワッシャー
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クラッシュロンスト
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綿麻ウレタンコーティング
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